針とLEDと006P

今回はプレゼント付きです

話の最後にプレゼントがあります。音楽をやっている人は最後までお付き合い下さい。

 

左がSEIKO ST-1100、右がSTEINBERGER 501

 

テクノロジーはあまねく押し寄せる

フィルムカメラがデジカメの登場で消し飛んだのと同じように、テクノロジーの進歩はあらゆる分野の様相を変えてしまう。音楽の世界も例外ではない。例えば作曲。DTMがなかった時代、大編成の楽曲はシミュレーションが困難なので作曲家は手持ちの楽器を演奏して「あたり」をつけながら作っていた。古関裕而などは何も使わず直接譜面に曲を書いたという・・・DTMというテクノロジーは少なくとも作曲者に門戸を広げたのだ。

閑話休題。今回の話題は楽器演奏者には必須のチューナーというガジェット(DTMでは要りません)。これを電子機器という観点から見ることにする。昔使っていた物が出てきたのでその記念に。

 

電子チューナーの誕生

楽器には何百年(何千年?)も前から続く「生楽器」が存在する。デジタル時代となった今でも厳然とした存在意義があり、現代の電子技術と上手に共存している。映像業界にいる私としては実にうらやましい限り。フィルムカメラなどは共存できず実質駆逐されてしまった。

さて、このチューナーという機械、楽器の音程を合わせるためのもので、つまりは周波数測定器だ。以前は基準となるアナログ音源(笛や音叉)が使われていたのだが、電子チューナーが登場するとあっというまに置き換わっていった。何より扱いが簡単だし、精度に関しては機械式時計がクォーツ時計に変わったようなものである。

これはその電子チューナーの一つ、SEIKO ST-1100。

 

SEIKO ST-1100

 

周波数の測定は純デジタル式に行われ、結果を針で表示する。ちょうどAU32と同じである。「なぜ針式なの?」と聞かれれば「趣があるからじゃないだろうか」という曖昧な答えしかできない。事実SEIKOはデジタル表示器が発達した今でも針式の後継機SAT1200を出し続けている。値段は液晶表示式のSAT50よりずっと高いし、おそらく性能面でのメリットはない。

私にとってST-1100は何ら問題のないチューナーだったが、楽器は持ち出して暗いところで弾く場合が多かったので暗所視認性の高いものに切り替えた。それがこのSTEINBERGER 501である。

 

STEINBERGER 501

 

とても大きなLED表示である。自己発光なので暗闇でも使え、デザインも秀逸。しかしSTEINBERGERがこんなものを設計・開発できるわけがないので、日本の優秀なOEMメーカーの仕事であろう(MADE IN JAPAN)。表示が大雑把に見えるかもしれないが、ST-1100の表示幅は±50CENTなことに注意。STEINBERGER 501は±20CENTだ。十分な精度である。

青色(白色)LEDが一般化する以前の製品なので、表示は赤色LEDと緑色LEDで行う。我々の世代には懐かしい「LEDの色」である。今のチューナーは液晶表示が主流。若い子が見ればこれがクラシカルに見えるのかもしれない。

 

 

電源は006P

さあここで使用電池006Pの話になる。音楽から電子技術へ話題が移る。

 

共に電源は006P

 

金色の四角いものが006Pと呼ばれる電池である。機器から伸びているパッドに電極を差し込んで使う。我々が子供の頃は電子機器によく使われており馴染み深いものなのだが、最近ではあまり見なくなった。

006Pが使われた理由は公称電圧が9Vと高いからである。普通のマンガン電池は公称電圧1.5V。実は006Pは小さなマンガン電池を6個(6 pieces)直列につないで全体を四角いケースで覆ったものである。(小学生の頃よく分解して遊びました。)直流電源は電圧を落とすことは比較的簡単だが上げることは面倒。だから電圧の高い電池が必要だった。単三電池6本直列では電池室が巨大になり実用的でないので006Pが生まれた。元々006Pは戦後ソニーのラジオ、つまりポケットに入るトランジスタラジオのために規格されたものなのだ。

特にデジタル回路は私が技術者になった30年前の段階でも5V駆動が基本だった。(それ以下で動くものは「低電圧駆動回路」と呼ばれていた。)今回取り上げた2種のチューナーは20年ほど前の製品だが、共に電源は006Pである。

006Pが不要になったのは電圧を上げる(昇圧)回路が進歩したのと、そもそも回路全体が低電圧で駆動できるよう進化したためである。

 

 

今では楽器の上に・・・

006Pは昔小型・軽量を目指して作られたものだ。しかし今の子が見れば大きくて重いと思うだろう。何しろ今時のチューナーは006P電池より小型・軽量なのだから。ボタン電池(3V)1個で駆動し、楽器の上にクリップで固定できる。全体が小さい分表示画面も小さいが、目のすぐ近くに置けるので何ら問題はない。

 

今時のチューナー。006P電池より小さい。

 

もう実体すら不要かも

チューナーは音をデジタル的に取り込む部分と、データを処理するプロセッサと、表示部があれば構成できる。つまり、スマホのアプリとして構成できるのだ。事実Android, iPhone共にチューナーアプリはフリーを含め多数ある。

 

Android用フリーアプリの例。周波数まで直読できる。脱帽である。

 

プロセッサのパフォーマンスから考えてスマホアプリの性能は専用機より上だろう。専用機のメリットはもはや使い勝手程度である。機械の大小とういうレベルの話ではなく、実体が必要ない時代に突入している。仮想が実体を駆逐する悩ましい事例がここにもある。

 

 

 

 


夏休み特別プレゼント

愛読者プレゼントです。SEIKO ST-1100, STEINBERGER 501 をそれぞれ1名様にプレゼント致します。もちろん前世紀の中古品で、使用には006P電池が必要ですが、渋い絶版モデルではあります。(STEINBERGERのチューナーなんかもうないでしょ?ZEN-ONが代理店をやっていたころの製品ですよ。)一応「必要な人(楽器演奏者)」に限定致します。ご希望の方はご希望の品名を明記の上2015年8月20日までにhimeji@yasuhara.co.jp宛にメールを下さい。応募者多数の場合は抽選致します。

※ 締め切りました。ご応募有り難うございました。


 

 

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