闇に隠れて生きる 日立デジカメ (5)

偽物兄弟

2009年になってとうとう日立デジカメは第四世代に突入する。CMOS撮像素子の画素数が900万画素にアップし、外観が大きく変わった。

 

   
 
HDC-901 偽物兄

 

これを見ると誰もが、「おっ、日立デジカメもとうとう光学ズームを搭載したのか」と思うであろう。メインスイッチを押せば一般的なデジカメのように鏡胴がぐいっと前に伸びてきて・・・・と思うだろう。

しかしこのカメラ、偽物なのだ。

電源を入れても鏡胴は伸びてこない。実はこのカメラ、鏡胴中央の黒い部分だけがレンズで、その外側の何重にもなっている銀色の枠は、何というか、ただの飾りなのだ。オートフォーカスもなく固定焦点である。何のことはない、仕様は今までの機種とまるで同じで形だけ光学ズームデジカメに見せかけているのだ。こんな物に天下の日立ブランドを付けて販売したのだ。

これがカメラのパッケージである。

 

 

私もいつかセレブになってこんなパーティーに参加したいものである。もっともカメラはもっとましなものを持っていくが。一般的にカメラのパッケージは極めてシンプルなものである。カメラ店では客が手に取るものではなく、買うときになって奥から出てくるものだからだ。このパッケージデザインがホームセンターで平積みして売る商品であることを示している。下にずらっと並べられている機能は誇れるような物は何一つなく、現代では隠すべきスペックである。書いていることの意味もわからない人が買うのだ。

 

そして2010年にはこれが登場する。

 

   
 
HDC-W902 偽物弟

 

今度は防水カメラになった(?)。防水カメラはこのように機体の端にレンズがあるもの多い。(下にある「普通の防水カメラ」を参照。)理由は、防水カメラではズーム時にレンズを前に繰り出すわけにはいかないので、長い光学系をカメラ内部に収める必要があるからだ。レンズから入った光はミラーで下方向に90°曲げられ、撮像素子に到達する。

 

   
 
「普通の防水カメラ」 パナソニックFT20
 
「普通の防水カメラ」 フジXP150

 

もうお気づきと思う。このHDC-W902は今までの日立デジカメと同様ズームレンズではなく、撮像素子はレンズの後ろにある。つまりレンズを機体の端に配置する必然性はないのだ。他の防水カメラと同様のデザインにしただけである。

偽物である。

ちなみに防水カメラには工業規格で決められた等級というものがある。最近のカメラで防水をうたうものは等級7や8で、水中で写真が撮れる。FT20は水深5m、XP150は水深10mまでの防水をうたっている。HDC-W902は・・・・・無等級である。つまり、水が入らないように努力はしているというだけである。実際マニュアルには強烈な水しぶきに対して保証しませんよと明記してある。水に浸けてはいけない防水カメラだ。

参考までにFT20は光学4倍ズーム、XP150は光学5倍ズームだ。どちらも光学式手ぶれ補正を搭載している。XP150はGPSなんかも付いている。実販価格はそれぞれ17,000円、20,000円程度だ(2012年5月現在)。HDC-W902は今でも13,000円程度で販売されているのを見かける。今日もカメラに詳しくない人が「パナソニックのより安いなあ」なんと思って買ってしまうかもしれない。

ちなみにHDC-W902で「電子ズーム」なるものを最大の6倍に設定して撮影した画像がこれである。クリックするとフルサイズの画像が開くが、腹が立つので見ない方が良いかもしれない。

 

 

断っておくが、この写真はHDC-W902を使って「できるだけ高画質になるよう」最高画素・最高画質に設定し、明るい屋外で撮ったものである。これが2010年に発売された「日本ブランド」カメラの画である。

その上、このHDC-W902は前代未聞の欠陥がある。何と日時の設定ができないのである。撮った画像のタイムスタンプは2009年1月1日12時になってしまうのだ。これは後で撮った日がわからなくなるとか、そういう生やさしい次元の問題ではない。デジカメで撮った画像はパソコンや各種情報機器(DPE店にあるプリンタなども含まれる)ではファイルとして扱われる。少しパソコンに詳しい人ならわかることだが、ファイルに付いている日時(タイムスタンプ)は非常に重要なもので、これがいい加減だと様々なプログラム上で不具合が出る。つまりタイムスタンプをつける機能がないHDC-W902は、パソコンのファイルシステムについての基本的な知識がない人が作ったのだ。(もし知識がありながらタイムスタンプ機能を省いたならば、その人はエンジニアでなくテロリストである。)

日時がすべて2009年1月1日12時になるのなら、Exifデータもそうなっているのかと思いきや、こちらはブランク(不定)となっている。完全に確信犯である。

 

 

HDC-W902を最後に「日立デジカメ」の歴史は終わる。これは別に日立リビングサプライが今までの所業を悔いたからではなく、単純にOEM元がこんな程度の低いデジカメを供給しなくなったからであろう。供給があり、誰かが買う限りは2012年モデルも出ていたに違いない。

 

第6話に続く

 

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