闇に隠れて生きる 日立デジカメ (2)

i.megaというサブブランド

日立デジカメはi.megaというサブブランドを持っている。パナソニックのルミックスやソニーのサイバーショットのようなものだ。表舞台に立つことがない日立デジカメになぜサブブランドが必要なのかわからないが、とりあえず作ってみたかったのだろう。それにしても表記が全部小文字だとか、中にドットが含まれているとか、読み方がよくわからない(多分アイメガだと思うが)とか、ブランドネーミングの作法から全てが外れている。「i.mega」の意味については日立リビングサプライが2004年5月10日付けで出したプレスリリースでこのように述べられている。

・・・・今回のデジタルカメラ(HDC-401)は、『さまざまな"I"(個性[Individuality]、主義[Ism]、私[I])に対応するために、「Mega」クラスの"I"(アイデア[Idea]・インパクト[Impact]ある商品、無限大[Infinity]の可能性)を創造し提供していきます。』という意味のi.megaシリーズとして発売します。

まるで酔っ払いの演説である。何か言葉を並べているだけで内容が全く無い。その上文章もおかしい。ちゃんとした日本語が書けない人に外部に発表する書類を作らせてはいけないし、発表前にチェックはするべきである。

i.megaというブランド名は職業コピーライターが作ったものではなく、日立リビングサプライの社内でコピーライトの素養がない人が考えたものだろう。

次は i.mega のロゴデザイン。初代はこれである。

 

 

デザインセンスは中学生時代の私以下である。(小学校高学年のころの私と互角か。)さすがにこれはダメだと気がついたのか、後にデザイン変更を行っている。

 

 

i.mega の i を大文字に変更した。mega も「おしゃれな」筆記体に変えてみた。ところがこのせいで「1mega」としか読めなくなった。デジタルカメラでは撮像素子の画素数を誇るために、300万画素なら3mega、500万画素なら5megaなどと書いたりする。そこに「1mega」としか読めないロゴがでかでかと印刷されているわけだから、消費者はたった100万画素しかない撮像素子を積んだ低性能のカメラだと誤解することになる。商品の価値を低く誤解させるという前代未聞の効果を持つブランドロゴである。なぜこれが笑いのネタにされなかったかと言えば、日立デジカメはそもそも闇に隠れた存在なのでこんなロゴに気付く人自体がいなかったからだ。

 

 

それに気付いたのかどうかは知らないが、後に i を小文字にした。全体を変えずに先頭文字だけ変更しているところがロゴデザインへのこだわりのなさを示している。ロゴ自体を削除したほうがましだとは考えつかないのである。

この後一度 i を大文字に戻したことがあるが(理由は不明)、最後まで3番目のロゴが使われ続けた。これらのロゴは職業デザイナーが作ったものではなく、日立リビングサプライの社内でデザインの素養がない人が作ったものだと思う。

 

不幸三兄弟

地獄三兄弟はマイナーチェンジを繰り返しながら2002年から2004年まで作り続けられた。進化の早いデジカメの世界にあってこんなレベルのカメラが3年間も作り続けられたのは一種の事件である。2004年頃には光学式手ぶれ補正を備えた500万画素クラスのコンパクトデジカメがあったが、そんな頃にHDC-30X(地獄三男)が発売されたのである。もっともこのHDC-30Xはスペックが低いだけではなく、まともに動かない欠陥機であった。設計に何か破綻があったのだろう。市場で大変な不評をかったあげく、最後は1万円以下でホームセンターなどに大量出回り消えていった。(注、当時のコンパクトデジカメは数万円した。)

地獄三兄弟の終焉と共に日立デジカメは次世代に移行した。私はこれら第二世代の3機種を「不幸三兄弟」と呼んでいる。買った人たちが不幸だと思うからである。

 

   
 
HDC-301slim 不幸長男

 

   
 
HDC-302slim 不幸次男

 

   
 
HDC-303X 不幸三男

 

不幸三兄弟の撮像素子はスペックから判断してHDC-30X(地獄三男)と同系統である。つまり、地獄三男を単四電池仕様にして(地獄三兄弟は単三電池仕様)、薄型・小型化したものが不幸三兄弟と言える。それ以外の部分は基本的に変わらない。撮像素子はCMOSで機械式シャッターを持たず、光学ズームもオートフォーカス機能もなしである。感度は相変わらずたったISO100なので、少し暗いところではぶれまくる。ごく初期のデジカメの欠点をすべてそのまま引き継いでいるのである。

不幸三兄弟は2006年頃まで製造された。このころになると世間一般の「デジカメ」のレベルと「日立デジカメ」のレベルはかけはなれてしまい、携帯電話に付いているカメラ以下の存在になっていた。

HDC-30Xがまともに動かない不良機種であったと書いたが、それと同系統である不幸三兄弟も極めて劣悪なものであった。安定して動作せず、クレームが多く発生した。特にHDC-302slimがひどく、メモリーカードを認識しなかったり、ホワイトバランスがとんでもない方に転んで死人のような顔色の写真が撮れたり、ストロボを使えば撮影距離を守っても白飛びを起こすなど、到底まともな製品と言えるものではなかった。すぐ後に代わり映えしないHDC-303Xが登場していることからも推して知るべしである。

不幸三兄弟をトイカメラとしてシャレで買った人は良いが、そんな人はごくわずか。あまりお金を持っていなくて、「安いけど日立だから良い製品だろう」と信じて買った不幸な人の方が圧倒的に多かっただろう。

 

相変わらずのデザインレベル

HDC-301slimは1990年代に中国の電気店で見かけたようなデザインである。カメラとしての品位が全く無い。エッジをわざわざ鋭角にするなどデザインの基礎すらわかっていない。前後に誇らしく「4X」と書かれた部材が取り付けられているが、これは光学ズームではなく電子ズームのことなので、本来誇れる物では無い。背面の「4X」は押しボタンに見えるが、ただの飾りである。意味の無い飾りにわざわざホログラム処理をしているあたりが泣かせる。

 

 

さすがにこれではいけないと思ったのか、HDC-302slim、HDC-303Xではすっきりしたデザインに変わった。ここでやっと普通の「WEBカメラ」程度のデザインになったのだ。デジカメのレベルには全く到達していない。デベソのようなレンズにはカバーすら付いていない。

さて、不幸3兄弟は今のデジカメに比較してもかなり薄型である。その理由の一つが底部に隠されている。

 

 

SDカードのスロットが外部にむき出しである。つまりスロットカバーというものを省略しているのだ。そんなものを省略して良いかどうかは、他のカメラが全てスロットカバーを備えていることから考えればわかることだ。

 

第3話に続く

 

目次に戻る