3Dデジカメ レクイエム(2)

ぬかるみ感あふれる逸品、「3D-COOL」

さて、W3や3D1は大企業の製品である。2010年頃には名だたる大企業達が3D家電品を多数発表したわけだから、まあ、その一部であると考えれば良い。この時は大の大人達が揃っておかしな夢を見たのである。しかしこういったムーブメントが起こると、それに影響されて必ず不思議な製品が現れる。私の大好きな「ぬかるみカメラ」である。「3D-COOL」は第一級のぬかるみカメラだ。

 

名前もクールな「3D-COOL」

 

本当に発売されたのか?

いきなり妙な疑問だが、3D-COOLは本当に発売されたのだろうか。3D-COOLの発売元は「株式会社 通販工房」である。この会社、どうも通販会社ではなく通販のコンサルタントやサポートをしている会社のようだ。(と言われても、具体的にどんな業務だかピンとこないが。)それがなぜかオリジナル製品を自社から発売したのである。通販工房のWEBサイトには3D-COOLの紹介ページがあり、「2012年9月3日に3D-COOLを発売開始いたしました」とある。「発売開始」という日本語がおかしいとか、ページの右下にリンク先のないおかしな文字列があるとかの細かい指摘はやめておくが、どこで買えるかとかいくらだとかいう肝心な情報が全くない。2013年7月25日現在、情報の更新は皆無である。

 

 

〈追加情報〉 2013年9月1日現在、上記「3D-COOLの紹介ページ」へのリンクが切れている。「発売開始」から1年を目前にした訃報である。せめてもの思い出に3D-COOLのカタログとマニュアルはこのページからダウンロードできるようにしておいた。(オリジナルPDF形式)

 

3D-COOL カタログ

3D-COOL マニュアル

 

現在このカメラはAmazonで「セール品 ¥5,980 通常配送料無料 <購入特典>microSDHCメモリカード4GB&USB電源アダプター付き!」として販売されている。販売元は(株)アカシックライブラリーである。これは現状だが、いままでも通常の製品として販売されたことはないと思う。3D-COOLが発売された2012年9月は3Dテレビがほぼ終息した時期であり、3D家電に未来はなかった。発売のアナウンスはしたが正規の販売は見送られ、少数の在庫がセール品として世に出ただけだと思う。ついでに言えばこの(株)アカシックライブラリーはあの西和彦氏の会社であり、Amazonで販売している商品はたった4点のみ。その内1点は西氏の著書という有様である。このカメラの周辺は、いろいろな所からぬかるみ臭が漂ってくる。

私は3D-COOLをAmazonで買ったのではなく、オークションに出た新古品を1,750円で手に入れた。出品者は中古カメラ店だったので、誰かがどこかで買って持ち込んだのだろう。元の出所はAmazonなのかそうではないのかはわからない。ちなみに私の機体はシリアルナンバーA0001107なので、大した数が生産されなかったことは容易に想像がつく。

 

意外なことに物は良い

概してマイナーメーカーのデジカメなどは、どこかのOEM元が用意した製品を多少アレンジして販売するだけのものであり、価格優先の粗悪な物が非常に多い。このことは本コラムの「日立デジカメシリーズ」に詳しい。ところが3D-COOLは少し様子が違う。非常に物が良いのだ。しかも同じ製品が他社から発売された形跡もないので、通販工房専用に開発された機種と思われる。

外観はいわゆるミニマルデザインであるが、非常に洗練されていて美しい。これだけのデザインができる人は、単に美術的センスがあるだけではなくカメラというものを良くわかっている人だ。特にレンズ周りの処理は賞賛に値する。レンズに不用意に指がかかることをデザインの工夫でさらりと防いでいる。デザイナーは一体何者だろう?レンズやレリーズ周りの要所には金属部品が使われいる。ボディーの材質はプラスチックだが、銀塗装の上にコストのかかるクリアのウレタン塗装を噴いており、実に丁寧な造りである。

電池は充電式リチウム電池。富士NP-45互換なので入手も運用も容易である。メモリーも標準的なmicroSDカード。カメラ本体は非常に小型で充電もデータ転送もUSBで行えるが、電池やメモリーカードを交換可能としており非常に堅実で実用的な設計だ。

 

     
 
アルミ枠にカラーアルマイトリング
 
要所に金属部品
 
     
 
ミニマルデザインのお手本
 
電池・メモリーカード共交換可能
 

 

性能・機能も問題なし。もちろんW33D1のような本格的な3Dカメラではないので、レンズは単焦点でピントも固定である。背面液晶パネルも3Dではない。しかし撮影した画像はちゃんとMPO形式で記録され、3DテレビにHDMIで繋いで鑑賞することができるし、富士フィルム3Dプリントで出力することもできる。画像も優秀。500万画素のCMOSカメラの画と言えばそれまでだが、安物カメラにありがちな画像の乱れもなく、周辺まで良好な画質をキープしている。W3や3D1の元値が50,000円前後であるのに対し20,000円程度の価格層で販売することを考えて開発されたのだとすれば、非常にバランスの良い優秀な製品である。

 

3D-COOLによる作例(2DモードのJPEG画像)。クリックでフルサイズ。

 

MPOデータから作成した疑似3D画像

 

通販工房の内部にカメラを企画できる部署があるはずはないので、すべて外部に丸投げして開発したのだと思うが、投げた先がかなり優秀だったということである。カメラ本体だけではなく、パッケージやマニュアルの造りもとても良い。何か問題があったとすれば、そもそも3Dカメラという企画が間違っていたということだけである。

 

パッケージも実に美しい

 

第3話に続く

 

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